· 社説 (Editorial) · N1 · 752字

遅れる生物多様性保全 地球の危機直視し行動を

Biodiversity Conservation Is Lagging: Face the Planet's Crisis and Act

生物(せいぶつ)多様(たよう)性(せい)の危機(きき)は深刻(しんこく)さを増(ま)している。対策(たいさく)を加速(かそく)させなければならない。

アルメニアで先月(せんげつ)開(ひら)かれた国連(こくれん)の生物(せいぶつ)多様(たよう)性(せい)条約(じょうやく)第(だい)17回(かい)締約(ていやく)国(こく)会議(かいぎ)(COP17)で、取(と)り組(く)みが遅(おく)れている現状(げんじょう)へ深(ふか)い懸念(けねん)を示(しめ)し、対策(たいさく)強化(きょうか)で合意(ごうい)する文書(ぶんしょ)が採択(さいたく)された。ただ、経済(けいざい)システムを変革(へんかく)する具体(ぐたい)策(さく)や資金(しきん)調達(ちょうたつ)では踏(ふ)み込(こ)んだ内容(ないよう)を盛(も)り込(こ)めず、実効(じっこう)性(せい)に課題(かだい)を残(のこ)した。

国際(こくさい)NGOの分析(ぶんせき)によると、生態(せいたい)系(けい)の多様(たよう)さを示(しめ)す指数(しすう)が1970年(ねん)からの約(やく)50年間(ねんかん)で約(やく)7割(わり)も低下(ていか)した。推計(すいけい)800万(まん)種(しゅ)を数(かぞ)える世界(せかい)の動植物(どうしょくぶつ)のうち、約(やく)100万(まん)種(しゅ)が絶滅(ぜつめつ)の危機(きき)に直面(ちょくめん)しているとのデータもある。

やるべきことは明白(めいはく)だ。2022年(ねん)のCOP15では、生物(せいぶつ)多様(たよう)性(せい)の損失(そんしつ)に歯止(はど)めをかけて回復(かいふく)させるため、30年(ねん)までに達成(たっせい)を目指(めざ)す23の国際(こくさい)目標(もくひょう)がまとまった。

陸域(りくいき)・海域(かいいき)の各(かく)30%を保護(ほご)区域(くいき)とすることや、外来(がいらい)種(しゅ)の削減(さくげん)、企業(きぎょう)活動(かつどう)が及(およ)ぼす影響(えいきょう)の評価(ひょうか)と開示(かいじ)などを掲(かか)げた。気候(きこう)変動(へんどう)対策(たいさく)の「パリ協定(きょうてい)」と同様(どうよう)に、各国(かっこく)が自主(じしゅ)的(てき)に目標(もくひょう)を設定(せってい)し、取(と)り組(く)みを進(すす)める仕組(しく)みとした。

しかし、国連(こくれん)が現状(げんじょう)を分析(ぶんせき)したところ、締約(ていやく)国(こく)の9割(わり)が目標(もくひょう)を策定(さくてい)したが、すべて実現(じつげん)しても国際(こくさい)目標(もくひょう)の達成(たっせい)には届(とど)かないことが明(あき)らかになった。順調(じゅんちょう)に進(すす)んでいる施策(しさく)も半分(はんぶん)に満(み)たなかった。

COP17では、現状(げんじょう)への危機(きき)感(かん)は共有(きょうゆう)された。ただ、対策(たいさく)を強化(きょうか)する具体(ぐたい)論(ろん)に入(はい)ると、締約(ていやく)国(こく)間(かん)の溝(みぞ)が浮(う)き彫(ぼ)りになった。

とりわけ遅(おく)れが目立(めだ)つのが、生態(せいたい)系(けい)を損(そこ)ねる乱(らん)開発(かいはつ)や地球(ちきゅう)温暖(おんだん)化(か)を招(まね)く「有害(ゆうがい)な補助(ほじょ)金(きん)」の削減(さくげん)だ。欧州(おうしゅう)などが実施(じっし)を強(つよ)く促(うなが)すよう求(もと)めたのに対(たい)して、経済(けいざい)成長(せいちょう)への影響(えいきょう)を嫌(きら)う国(くに)は反発(はんぱつ)し、「各国(かっこく)の事情(じじょう)に応(おう)じて実施(じっし)を加速(かそく)する」との文言(もんごん)にとどまった。

資金(しきん)不足(ふそく)を補(おぎな)うため、拠出(きょしゅつ)を担(にな)う先進(せんしん)国(こく)の範囲(はんい)の拡大(かくだい)も議題(ぎだい)となった。だが、「新(あら)たに資金(しきん)を出(だ)す意思(いし)のある国(くに)が自主(じしゅ)的(てき)に申(もう)し出(で)る」という妥協(だきょう)案(あん)に終(お)わった。

人々(ひとびと)の暮(く)らしや企業(きぎょう)活動(かつどう)は自然(しぜん)の恵(めぐ)みに依存(いぞん)する。それを支(ささ)えるのが豊(ゆた)かな生態(せいたい)系(けい)だ。いったん破壊(はかい)されれば取(と)り返(かえ)しがつかない。目標(もくひょう)を掛(か)け声(ごえ)に終(お)わらせず、行動(こうどう)に移(うつ)すことが各国(かっこく)に求(もと)められる。

理解度チェック Comprehension check

  1. 筆者の主張として最も適当なものはどれか。

  2. COP17で採択された文書について、筆者はどのように評価しているか。

  3. 国連の分析によって明らかになったこととして、本文の内容と合っているものはどれか。

  4. 「有害な補助金」の削減について、合意文書の文言が弱いものになったのはなぜか。

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